2025年05月17日
「運動するとよく眠れる」というのはなんとなくそうだと思うでしょう。私も診察の際に「無理なくできる範囲で体を動かしましょう」といったことを勧めています。しかし、実際のところ、運動と睡眠の関係はどうなのでしょうか?
この疑問に答えるような論文が発表されました。運動と睡眠について、過去に発表された81件の論文をメタアナリシスという方向で解析した研究です。対象となったのは、健康な人だけでなく、高齢者や慢性疾患を持つ人も含まれていて、非常に幅広い人たちのデータが使われています。この研究では、主に「睡眠の質」にどれだけ運動が良い影響を与えるかを調べました。睡眠の質とは、どれだけ深く眠れるか、寝つきは良いか、夜中に何度も起きないか、といったことを含みます。結果は明確で、運動を定期的に行うことで、主観的にも客観的にも睡眠の質が改善されることがわかりました。
特に効果が高かったのは、ヨガや太極拳といった「身体と心を同時に整える運動」です。これらはストレスを減らし、自律神経のバランスを整えることで、眠りやすくしてくれると考えられます。また、有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)も、睡眠の効率を上げ、深い眠りを促す効果があるとされました。
さらに、運動の頻度も大事で、週に3回以上、1回30分以上の運動を続けることが、より良い睡眠につながるとされています。一方で、単発的な運動でも一定の効果はあるものの、習慣的に行う方が明らかに効果が高いという結果になりました。
この研究の大きな意義は、運動が薬に頼らない自然な睡眠改善の方法として、非常に有効であることを科学的に証明した点にあります。特に軽度の不眠や睡眠の質の低下を感じている人にとっては、薬を使わずに自分でできる実践的な方法として、運動が役立つと考えられます。
まとめると、「運動は睡眠の質を改善する」というのは科学的にも裏付けられた事実です。体を動かすことで、より満足感のある眠りが得られる可能性が高まります。自分にとって無理なく続けられる運動を生活の中に取り入れてみることをお勧めします。
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